「二味の薬徴にみる薬方構成とその応用」

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不妊症 漢方薬/不妊症の漢方薬はむつごろう薬局
不妊症 漢方薬/不妊症の漢方薬はむつごろう薬局

「二味の薬徴にみる薬方構成とその応用」

むつごろう薬局 薬剤師 鈴木寛彦

私たちの薬草作りは、当帰の栽培から始まりました。この15年間、自然から多くのことを学びました。当帰はよく水を好みます。藁引きと水あげで、十分に水分を保った結果、昨年は200Kg近く乾燥当帰が取れました。当帰を2つに切ってみると中はまるでスポンジのようにぶかぶかしています。しかし、そのまま乾燥機に入れてもなかなか乾燥してくれません。精油成分が膜を作り、乾燥を防いでいるのでしょうか。当帰の働きは、血を和し、寒を散じ、陰性の血証を治す。まるで乾いたスポンジが水を吸うがごとくすばやく余分な水を血管中に引き込み、精油が血と水を和ませ、温め、寒を散らしていくイメージです。また、油が多い生薬には柴胡があります。乾燥した柴胡の地上部はバリバリと音をたててよく燃えます。その油で、夏は乾燥から身を守りますが、その成分が体内に入りますと汚れた油が溜りやすい胸脇部に働き、それを取り除いていきます。また、その油がまるで自動車のエンジンオイルのごとく、胸脇の気熱を和す働きがあります。胆石や、肝炎に柴胡剤がよく使われるのはそのためでしょうか。
 私たちは、「不妊症」に力を入れていますので、より質の良い「当帰」を作りたいと日々研鑽しています。当帰は、傷寒論中の、当帰四逆湯、当帰四逆加呉茱萸生姜湯に含まれます。少陽病(第2ステージ)虚証に位置するこの薬方は

「手足厥寒し、脈細にして絶せんと欲する者は当帰四逆湯之を主る。」

「内に久寒ある者は当帰四逆加呉茱萸生姜湯に宣し」

と論じています。(当帰四逆湯、当帰四逆加呉茱萸生姜湯の証)
当帰四逆湯の成分は、当帰、桂枝、芍薬、大棗、甘草、細辛で、それに呉茱萸、生姜が加わると当帰四逆加呉茱萸生姜湯になります。生薬の構成からみてみると桂枝湯から変化したものと考えられます。詳しく言いますと、桂枝湯(桂枝、芍薬、生姜、大棗、甘草)から、水の動揺(嘔気、せき)を治す生姜を除き、大棗を倍加して、当帰を加え、身体を温めて利尿作用を促す細辛と水気を通利する木通を加えたもの。また、「内に久寒有り」は、慢性的に水毒があって、冷えがある状態で、嘔吐、嘔逆、激しい頭痛、腹痛となるので、生姜を多くし気と水を温散下降させ、血分を和す呉茱萸を加え酒で煎じる当帰四逆加呉茱萸生姜湯となります。
時代はさかのぼり2500年前の中国。中国医学は地理的条件によって黄河、揚子江を境にして「黄河文化圏」「揚子江文化圏」「江南文化圏」に分かれました。その中の「江南文化圏」は、高温多湿で流行病発生の危機に常にさらされていたので純医療的な薬物療法に全力を尽くしました。そこで集約された文献が「傷寒雑病論」(傷寒論、金匱要略)です。私たち田畑流古方派漢方の起源でもあります。また、この地域では、多くの急性伝染病に共通する症候群に対して民間薬的な一種類の薬物ではその効果が出難い為、数種類の薬物の綜合作用に期待をよせました。それが、漢方薬になるのですが、その骨格となるべきものが、二味の薬徴で、その集合体が薬方になっていきます。当帰四逆湯で言えば「当帰・大棗」です。野球の中のバッテリー、個人種目でもコーチとの二人三脚、家庭では夫婦、会社でも良きパートナーが必要ですし、そのパートナーによって主役の力は限りなく引き出されます。当帰は、大棗とペアーを組んで「血を和し、寒を散じ、胃を滋潤して機能亢進を沈静し表寒を温散する」働きを持ちます。また、この証に出てくる「手足厥寒」は患者自ら寒冷を覚えるもので、「当帰・細辛」がそれに働きます。他人が触って冷たいが、患者は必ずしも寒冷を感じないものを、「厥冷」と呼び、さらに険しくなる様を「厥逆」といって、危険な状態です。「厥冷」「厥逆」には、少陰病(第5ステージ)の四逆湯の「甘草・乾姜」「甘草・附子」「乾姜・附子」が働きます。「当帰・芍薬」は寒冷によって増悪する腹痛(疝)を治し、「当帰・通草」は利尿して厥寒を治します。「芍薬・甘草」は腰腹拘攣に働きます。

6つのステージにみる二味の薬徴

傷寒論では、病状を6つのステージ(太陽病、少陽病、陽明病、太陰病、少陰病、厥陰病)に分けていますが、薬方の成分から考えて特徴的な二味の薬徴が見えてきます。
① 太陽病桂枝・麻黄
桂枝・甘草
② 少陽病生姜・大棗(甘草)
生姜・半夏
甘草・麻黄
茯苓・朮
柴胡・黄_
黄連・黄_
③ 陽明病枳実・厚朴
桃仁・大黄
大黄・芒硝
④ 太陰病半夏・乾姜
地黄・阿膠
当帰・川_
甘草・大黄
芍薬・甘草
甘草・乾姜
附子・朮
⑤ 少陰病乾姜・附子
附子・朮

「寒、冷、厥」にみる二味の薬徴

6月に入ると畑では雑草の伸びるスピードが急に増してきます。新しく買った手押しの草刈り機の試運転もあり、その日は炎天下朝6時より帽子も被らず半日働き続けました。その後薬局に行き働いていますと一日中身体がポカポカしていることに気がつきました。日に当たると身体が温まることを実感しました。また、体内の熱は筋肉を収縮することでも作られます。かぜの病邪が侵入してきますと生体防御の為、発熱させますが、葛根湯証の時は首から背中に渡り、また麻黄湯証に至っては背中から腰にかけて筋肉を収縮させ熱を作ります。昔から子供の風邪といったら「麻黄湯一服で治る」ことが多かったのですが最近、少陰病の麻黄附子細辛湯がよく効くのも、外で身体を使って遊ばなくなったことが原因でしょうか。これからの日本を考えると私たちが力を入れている無農薬、有機肥料での畑作業が、子供たちの、テレビゲームを超える遊びのトレンドになることを日々願っております。

 牛糞に籾殻と落葉を混ぜてたっぷり水をかけておきますと中にいる微生物が働き始め発酵が始まります。田畑先生はご自分で堆肥を作っているので、時々堆肥小屋に連れて行ってもらいます。
堆肥は秋から冬にかけて作り始めるのですがその中から煙が立ち上っています。中の温度は65度に達するそうです。人間の身体の中も同じです。人間の堆肥小屋は大腸です。米と味噌汁と漬物を食べると腸の中のよい微生物が働いて熱が作られます。その熱は、筋肉が弱い女性の身体を中から温めていく手助けをしてくれます。大腸に近いところに卵巣を作ったのはまさに神のなさる業であります。朝は、パン、ヨーグルト、コーヒー、昼は菓子パンの食事では身体の芯から冷えてしまうのも至極尤なことです。
「寒、冷、厥」を傷寒論中より探してみますと、病の始まる太陽病(第1ステージ)では「桂枝・甘草」の二味の薬徴の桂枝湯が「汗出で悪風」を治し、「桂枝・麻黄」の葛根湯では「汗無く悪風」するものを治します。風邪の漢方薬を考える上では、この汗の有無は非常に大切になります。また葛根湯を使いたい方で、胃がもたれやすい方には、「生姜・半夏」の二味の薬徴を応用させ葛根湯加半夏とすると胃の負担はなくなります。それだけではなく、桂枝、甘草、半夏の太陰病虚証に位置する「半夏散及湯」の方意を含み、太陽病と少陰病の表裏両位に働き、咽中痛にもよく働きます。より咽中の炎症がひどい場合には、桔梗を入れます。「桂枝・麻黄」が働くものに桂麻各半湯、桂枝二越婢一湯があります。桂麻三兄弟とも呼ばれ、陽症の、'のどちく'といって咽の痛みを感じる風邪によく効きます。どちらも'熱多く寒少なし'と傷寒論で言っていますが、桂枝二越婢一湯には口渇、尿不利があるのが特徴で、蒼朮と附子を加えると疼痛性疾患に使われます。また、陰性の 'のどちく'には麻黄附子細辛湯がよく効きます。また、麻黄附子甘草湯もあることから、甘草末を混ぜて服用するとより、のどの痛みには有効と考えます。陰陽の見分け方は、のどの赤みの具合と、だるさの具合を見ています。
病が進み胸膈内が戦場となる、少陽病(第2ステージ)では、その熱型は往来寒熱となり、太陽病位の悪寒発熱と違い、上げ下げを繰り返し熱が上がってきます。ここでは、「柴胡・黄_」の二味の薬徴が出番となります。柴胡がよく育つ伊豆山奥の丘の上にある薬草園では、温かい風とつめたい風がよく入り混じって吹いています。柴胡剤を使うときの熱の出方によく似ています。この「柴胡・黄_」の二味の薬徴をもつ柴胡桂枝乾姜湯は、私の愛用する大好きな薬方です。金匱要略には、「寒多くして」とあり、後に出てくる「甘草・乾姜」も含まれて、肺が冷やされている結果、手足が冷えてきます。柴胡桂枝乾姜湯は、傷寒論では、

傷寒、已に発汗し、復之を下し、胸脇満微結し小便不利、渇して嘔せず、但だ頭汗出で、往来寒熱し、心煩する者は柴胡桂枝乾姜湯之を主る。

と言っています。ひどく虚した柴胡の証で、昔は、盗汗甚だしい、結核の方に黄耆、別甲を入れて使用していました。また、動気、息切れの甚だしい者に呉茱萸、茯苓を、食が進まない方に人参を入れます。田畑先生は、この薬方を精神困乏の人を目標に使用しています。気持ちばかりあせって取越苦労が多い現代人にはぴったりの薬方ではないでしょうか。 「橘皮・生姜」の橘皮湯は「手足厥」といっています。胃が冷えて、停滞感があり、手足が冷え、吃逆、乾嘔を治します。熱証のみの陽明病(第3ステージ)では、「寒、冷、厥」なく、病位が消化器中の負け戦、太陰病(第4ステージ)では、甘草乾姜湯の「甘草・乾姜」は、誤治から陥った「厥」をこの薬方で助けています。また、金匱要略には、肺中冷といって肺が冷やされた結果、裏に水が滞り、四肢厥冷、腹痛、下痢、頻尿、また胸膈内に溜った裏水は、心下痞、痞硬や、嘔、嘔吐、喘咳になる症候に対し、胸中を温める目的で使われます。 少陰病(第5ステージ)に入ると、身体は力なく横になりたくてしょうがなくなります。熱を作る力が弱るため「手足厥冷」し、先ほど述べた、「甘草・乾姜・附子」の四逆湯となり、危篤の証の厥陰病(第6ステージ)では、乾姜を倍量にした「手足厥逆」を治す、通脈四逆湯となります。

(まとめ)
畑を始めた当初、柴胡とオウゴンが隣り合わせで偶然花を咲かせたことがありました。かわいらしい黄色の花と、美しい青い花です。まるで夫婦のようにとてもバランスよく見えました。今、薬草園では、当帰と芍薬が選手とコーチのように、当帰と川_が野球のバッテリーのように同じ畑の中で自然の「二味の薬徴」を作り出しています。まるで、美しい絵画を見ているようです。まるで美しい音楽を聴いているようです。「漢方医学とはまず感じ取るもの」田畑先生が、いつも無言のうちに訴えている言葉です。そのタイミングを外さずに、その時期に使うべき、中心の「二味の薬徴」が見えたとき、患者様が変化すると思います。


(参考文献)
漢方ルネサンス    田畑隆一郎著   源草社
傷寒論の謎      田畑隆一郎著   緑書房
薬徴         田畑隆一郎著   源草社
よくわかる金匱要略  田畑隆一郎著   源草社
漢方サインポスト   田畑隆一郎著   源草社
漢方 第三の医学   田畑隆一郎著   源草社
傷寒論図説      田畑隆一郎著   源草社
傷寒論講義      奥田謙蔵著    医道の日本社

(略歴)
1989年北里大学薬学部卒業 むつごろう薬局薬剤師。漢方相談の傍ら、畑仕事で汗を流す生活。田畑隆一郎先生を師事。温成塾、無門塾塾生。東洋医学会会員。北里大学、東邦大学薬学部にて、非常勤で漢方の講義をしている。今の夢は2町歩(6000坪)のや薬草畑を作り上げること。


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  • 現在のシャクヤクの大きさです。これで5年目です。今年はそろそろ収穫どきかな?

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  • お城の薬草園にトウキの花が咲きました。香り感じないのですが、早くも虫たちがたくさん集まっていました。

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