| 現代薬徴「膠飴の妙」 むつごろう薬局 白井憲太郎 薬徴続編附録に云う"膠飴の能は裏急を治す"と。さすがに東洞流継承者の村井琴山といえども膠飴を"毒"と認識するにはいささか苦心したに違いない。今、市場では、トウモロコシを原料とした膠飴が出回っているようだが、漢方薬の栄養補助的存在にしか考えていないとしたなら、先人の苦労は報われない。 膠飴は"粘り"がないと効を示さない。同じ急迫症状を治す甘草との違いは、"粘り"があるかないかである。粘りのない甘草は、服用後速やかに体内に吸収され、全身を巡り、咽喉から心下・肌表・少腹に至るまですべての急迫症状を緩和させる。甘草湯・人参湯・甘草附子湯・桃核承気湯等をみれば明らかである。逆に粘りのある膠飴は、体内に吸収されにくく、裏(小腸や大腸等)に留まって急迫を治す。建中湯証で、腹中痛・腹中寒等の裏急症状が治るのもこのためである。やはり膠飴は粘りのある糯(もち米)でなければ、本来の力は発揮できないであろう。 【結語】幼き頃より、牛乳・ヨーグルト・アイスクリーム・ジュース等で裏を冷やし続けた現代人の腹底は、急迫症状(腹直筋二本棒)を呈し、軟食(パン等)がもたらした腹候は、幼児期のままで成長が止まり、成人になっても赤子の腹のようにふにゃふにゃと柔らかくくすぐったがる。赤子の腹で、赤子を授からないのは当然の理である。疲れやすい・猫背・歯並びが悪い・虫歯が多い・乗り物酔い・衂血・声が軽い・持続力がない・不安になりやすい・貧血・喘息・鼻炎・アトピー等の兆候が見られたら、建中湯証を疑ってかかるべきだろう。 冷飲冷食が横行する現代人に膠飴の証が後を絶たない。冷えると縮むただそれだけのことに、難病奇病と称してあたふたしている現代医療を見ていると、いかにその国の文化や食生活が大切かが分かる。然らば偶々とはいえ、寒気が増す頃になると餅を食し、裏急を緩めて身を守っていた先人の知恵には敬服せざるを得ない。食は血となり、骨肉となって私達人間の体質そのものを作り上げる。餅を食すれば粘り強い体質になるし、アイスクリームを食すれば甘く・冷たく・崩れやすい体質になる。古方家は、漢方だけでなく日本の食についても、古の重要性を説いていかなければ、文化を失いつつある現代人の病を治すことはできないであろう。
参考文献 (1) 小川新校閲・横田観風監修:吉益東洞大全集全4巻(たにぐち書店) (2) 田畑隆一郎著:漢法ルネサンス(源草社) (3) 田畑隆一郎著:よくわかる金匱要略(源草社)
(薬剤師:〒410‐0822沼津市下香貫下障子3142)
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