『瞑眩物語』

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不妊症 漢方薬/不妊症の漢方薬はむつごろう薬局
不妊症 漢方薬/不妊症の漢方薬はむつごろう薬局
『瞑眩物語』
沼津市・むつごろう薬局 白井憲太郎

類聚方広義題言十則に「薬能を明かにして後、方意得て詳かなるべく、方意を詳かにして後、方用得て精なるべし。」とあるように、漢方家にとって薬能を識るということは証を把握する上で最も大切なことである。但だ、ここでいう薬能を識るとは、むやみやたらに分析をするということではなく、患家の証に合した薬能を識るということである。古人はこれを"方証相対"と呼んだが、この方証相対を解するに当っては、吉益東洞先生の著'薬徴'の右に出るものはないであろう。まさに臨床のみを重視した世界に誇れる薬草書である。但だ、この東洞先生の血と汗と涙の結晶は、形式を廃除し過ぎたぶん言葉足らずで、未完成な部分も多いため、西洋化・合理化を学んできた現代人の思考では、埴輪(はにわ)のように'過去の遺品'になりつつあるようで恐い。俳句にも見られるように、日本文化の特徴は'単純化'にある。薬能が絞りに絞られて一能(主治)まで研ぎ澄まされた薬徴は、時として鋭利な刃物に変わり、患家の体内に滞った病毒を削ぎ落とす。これが万病一毒説、すなわち東洞医学=古医道の真骨頂とは云えないだろうか。

書に曰く「若し薬、瞑眩せざれば、厥の疾_えず」と。古方の大家吉益東洞が、薬が毒に当たれば必ず瞑眩しその後病が癒える、と云ったのはあまりにも有名な話である。しかしながら250年という歳月が経ち、我が国でも西洋薬が主流となった現在では"副作用"という概念が頭角を現し、その余波は漢方薬にも及んで瞑眩は陰を潜めている。確かに瞑眩の激しい様は、副作用のようにも見えなくはないが、ただ厳密に云えば漢方薬には副作用はないといえる。なぜなら主作用・副作用とは西洋薬の考えであって、漢方薬では証が合うか合わないかだけが治療の指針になるからである。"証が合わない"とは、ただ薬が効を示さないだけであって副作用とは違う。もちろん大黄でひどく下したり、麻黄でひどく脱汗したり、といったことはあるが、これは副作用というより誤治といったほうが正しいだろう。 東洞流に漢方を一言で表現するなら、薬はただ単に、体内の毒に当たってそれを排出させ、病を癒しているだけである。そして時折見せるその激しい様を"瞑眩"と呼んでいる。「漢方薬にも副作用がある」というような漢方を西洋医学的思考で捉えたような表現は、純粋な日本漢方存続において非常に危険であり、漢方医学と西洋医学を融合させるということは、寿司にソースを漬けて食べるようなものである。これは非常に相性が悪い・・・。もし漢方を世界へ、と望むなら、漢方の西洋化を図るのではなく、東洞先生の視点に立ってよく瞑眩を見極め、より一層古医道の感性を研ぎ澄ましていくことのほうが、反って西洋人の心を打つのではないだろうか。現代漢方家は、何でも欧米化という風潮に流されることなく、我が国の伝統医学に自信と誇りを持って治療に望みたい。


中省略

【結論】瞑眩は、青少年の非行のようなものである。少年は大人へと変わるとき、悪い自分を隠す術を知らず、毒を出す。しかし、これは決して悪いことではなく、ニキビのようなもので、毒を出し切って健常な大人へと成長していく。これを無理に押さえたり、隠したりすると、毒を出せないまま大人へとなってしまい、陰で悪さをするようになる。病気もこれと同じで、ステロイドや抗生物質等で、毒を押さえてしまったら、毒は体の中に残り、反って病をこじらすこととなる。人間も野生の生き物と同じで、きれいごとでは生きていけない。これは心も体も一緒で、悪いもの(毒)を隠したり押さえたりするのではなく、それを吐き出し、そして向き合い、それと戦っていかなければならない。大人しそう、真面目そうといわれていた人間が罪を犯したり、病がこじれて治らない人が増えている現状を見ると、悪いものは隠せという今の社会の風潮がそのまま映し出されているようである。


参考文献
(1)小川新校閲・横田観風監修:吉益東洞大全集(全4巻)たにぐち書店

(薬剤師:〒410‐0822沼津市下香貫下障子3142)

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