四十肩(肩関節周囲炎)と漢方薬(39歳男性:身長172cm体重70kg)

半年前より、右肩に痛みがあり、夜間や明け方悪化し、寝返りをうてないほど痛むこともある。右腕は肩の位置までしか挙げることができず、首筋も張って右側を向くのもつらいことがある。病院でブロック注射を打ってもらったが、一時的に良くなり、また元に戻った。それで漢方を試してみたいということだった。

漢方薬の独活葛根湯(どっかつかっこんとう)を処方。飲み始めて1ヵ月後には、首筋の凝りは改善してきた。が、肩の痛みは一向に良くならない。次に、汗がでにくいこと、それから水分をよくとることを目安に、二朮湯(にじゅつとう)を処方した。飲み始めて1ヵ月後、肩の痛みが半減し、肩の可動域が広がった。それからさらに1ヶ月間服用すると、肩の痛みがほとんど和らいだ。その後、約3ヶ月で肩の痛みは完治した。

膝の痛みと漢方薬(防已黄耆湯:ぼういおうぎとう)

65歳女性 身長156cm 体重60kg

3年前より両膝が痛み始めた。特に左ひざはひどくなると水が溜まるため、病院で抜いてもらっている。また痛みがひどいときは、痛み止めの注射を打つ。

体質的には、色白で汗をかきやすく、下半身はむくみやすい。また冬場は下半身が冷え、膝の痛みも悪化する。また、食べるものは甘いものが好きで、果物をよく好む。

漢方では、こういうタイプの方の体質を”水毒体質”と呼んでいる。水毒とは、体に余分な水が溜まりやすく、関節痛や神経痛などを起こしやすくなる体質である。この方の場合も、甘いものや果物を好むため、体に余分な水が蓄積し、膝の痛みを起こし始めたと考えられる。特に女性の場合、閉経すると体が冷えやすくなって関節が弱くなる。

この方には、体の余分な水を取り除いてひざの痛みを直す防已黄耆湯(ぼういおうぎとう)を処方した。飲み始めて一ヶ月がたつと、小便がよく出るようになってむくみが減った。さらに飲み続けて3ヶ月がたつと、ひざに水が溜まらなくなり痛みをとれてきた。ひざの痛みもとれてきたので、防已黄耆湯を飲んでもらいながら運動(ウオーキング1時間程度)をしてもらうようにした。その後、痛みは出なくなり、半年後に漢方薬を止めたが再発はみられない。