脂漏性皮膚炎に効く漢方薬(加味逍遥散)

30歳女性 身長160cm 体重58kg

一年前より、顔、首のまわり、背中、胸など(主に上半身)に痒みが出る。患部は赤く、痒みが強い。また、肌はカピカピに乾いており、フケも多い。病院で、ステロイド剤やビタミン剤などを処方されたが改善がみられなかった。

体質的には、便秘気味(3~4日に1回)で、ニキビやイボなど肌が荒れやすい。また、スナック菓子や菓子パンなどをよく食べている。舌の裏側を見せてもらうと、紫色の静脈が浮き出ていた。他に、仕事上での不満などが多かった。

漢方では、脂漏性皮膚炎を、脂の”毒”と考えている。これは、スナック菓子に含まれる油や菓子パンなどのクリームやチョコレート、あんこなどが体内で過剰栄養となって”毒”となる。脂の”毒”は、肝臓に溜まる。肝臓で処理できなくなったものが皮膚に、ニキビや皮膚炎になって現れるのだ。そしてこの肝臓の脂毒を排出する働きがあるのが柴胡(さいこ)という薬草である。まずこの方には、柴胡の入った加味逍遥散(かみしょうようさん)という薬を処方した。すると、飲み始めて10日経った頃から皮膚炎はかなりひどくなり、体の上半身が真っ赤になった。漢方ではこれをメンゲンと呼ぶ。メンゲンとは、体が毒を排出する際に起こす好転反応である。その後、しばらくしてから赤味はおさまり、約半年の服用を経て根治に至った。

一時的に真っ赤になったのは、脂毒が薬草の力を得て、一気に燃焼したのであろう。

掌蹠膿疱症と漢方薬(三物黄芩湯+紫雲膏)

58歳女性 身長157cm体重60kg

3年前より手のひらと足の裏に湿疹ができ、病院へ行くと掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)と診断された。病院ではステロイド剤を処方されしばらく塗っていたが、肌が次第にカピカピに乾き、分厚く硬くなった。また、夜になると手のひらと足の裏が熱くなり、痒みが増し、かくとぽろぽろと皮が剥ける状態になる。約1年間ほどステロイド剤を塗ったが改善が見られず漢方薬を試してみようとご来局された。

体質的には、瘀血(おけつ)体質で、血糖値がやや高い(ヘモグロビンA1Cが6~7%)。のどの渇きがあって、手のひらと足の裏は赤く熱を持っている。舌を見せてもらうと、白い苔がたっぷりとついている。

漢方ではこういう状態の体質を”血熱(けつねつ)”と呼んでいる。これは、血液に”熱”がこもっている状態である。閉経後の女性や子供によくみられる。漢方では血熱には地黄(じおう)という薬草をよく使う。この方の場合にも、地黄の配合された三物黄芩湯(さんもつおうごんとう)を処方した。また、外側から皮膚の再生を促す紫雲膏(しうんこう)を塗ってもらうことにした。初めの一ヶ月は、ぽろぽろと皮がむけることも多かったが、二ヶ月ぐらい経った頃から、新しく出てくる膿胞が少なくなり徐々に消失していった。その後約一年で根治し、再発はみられていない。